在宅医療の解説と実践
介護保険とは
施設ケアと在宅ケア
順天堂大学医学部公衆衛生学講座 講師
竹田綜合病院 総合連携本部 副本部長
田城孝雄
介護保険のサービス
介護保険により受けることの出来るケアのサービスは,大きく在宅で受けられる居宅サービスと,施設に入所または入院して受ける施設サービスの二つに分けられる。
1. 居宅サービス
(居宅サービスの定義)
介護保険法 第7条5項
この法律において「居宅サービス」とは,訪問介護,訪問入浴介護,訪問看護,訪問リハビリテーション,居宅療養管理指導,通所介護,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護,痴呆対応型共同生活介護,特定施設入所生活介護及び福祉用具貸与をいい,「居宅サービス事業」とは居宅サービスを行う事業をいう。
居宅サービスについて
表1にあるとおり12種類ある。これを分類すると,以下の通りになる。
- 在宅介護3本柱
- 医療色の強いもの
- 在宅と施設の中間
- その他
1-1.在宅介護の3本柱
(1) ホームヘルプサービス(訪問介護)
在宅介護サービスの主である。食事,排泄,入浴などの身体介護と,食事の調理,洗濯,掃除,買物などを行う家事援助の2つがある。
当初、2類型であったが、施行直前に二つの中間となる複合型を加えて、3類型となった。しかし、この度の介護報酬の見直しで、再び2類型になった。身体介護と生活支援と分けられる。
滞在型と,早朝・深夜に主に排泄の介助を行う,巡回型のサービスがある。
(2)通所サービス
通所により,サービスを提供することにより社会的孤立感の解消,心身機能の維持・向上を図るとともに,介護する家族の身体的・精神的負担の軽減を図るものである。福祉系の通所介護(デイサービス)と医療系の通所リハビリテーション(デイケア)の二つに分類できる。
通所介護(デイサービス)は,外出することにより,閉じこもりを防止して,社会的交流を図り,社会生活の助長に大きな目標があり,一方,通所リハビリテーション(デイケア)は,機能訓練を中心に,身体面の維持・改善に主たる目標が置かれている。
(3)ショートステイ(短期入所)
介護者の急病や,冠婚葬祭などの急用,介護疲れのために,介護施設に入所するサービスである。原則的に2ヶ月に1回7日間の入所ができる。
特別養護老人ホームや老人短期入所施設のような福祉施設に入所して,入浴,排泄,食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行う,短期入所生活介護と,老人保険施設や療養型病床群(特例許可老人病院)などの医療機関に入所して,看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療,並びに日常生活上の世話を受ける短期入所療養介護の2種類がある。
1-2.医療の色彩の強いもの
(1)訪問看護
居宅要介護者等(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生省令で定める基準に適合していると認めた者に限る。)について,その者の居宅において看護師その他により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。
(病状が安定期にあり,居宅において看護師他が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を要することとする。厚生省令36号施行規則第5条)
(2)訪問リハビリテーション
居宅要介護者について,その者の居宅において,その心身の機能の維持回復を図り,日常生活の自立を助けるために行われる理学療法,作業療法その他必要なリハビリテーションをいう。
(病状が安定期にあり,居宅において,心身の機能の維持回復及び日常生活上の自立を図るために,診療に基づき実施される計画的な医学管理の下における理学療法,作業療法その他必要なリハビリテーションが必要な人が対象である。)
(3)医学的管理サービス(居宅療養管理指導)
居宅要介護者等について,病院,診療所又は薬局の医師,歯科医師,薬剤師その他により行われる療養上の管理及び指導である。(その他は,施行規則第9条により,歯科衛生士,管理栄養士と定められている。)
| 訪問診療 | 医学管理 |
| 歯科訪問診療 | 口腔管理 |
| 訪問薬剤管理指導 | 薬剤管理 |
1-3.施設と在宅の中間
(1)特定施設入所者生活介護
有料老人ホームやケアハウス(在宅介護対応型軽費老人ホーム)などに入所して,ヘルパーの介護を受けるサービスである。
(2)痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)
9人程度の痴呆性老人が家庭的な環境で共同生活が送ることができるよう食事等の日常生活を援助し,痴呆性老人の自立生活及び介護する家族の支援を行なう。
1-4.その他
(1)訪問入浴介護
入浴設備(浴槽)を持参して行われる入浴の介護である。
(2)福祉用具貸与
厚生省告示第93号によると
車いす,車いす付属品,特殊寝台,特殊寝台付属品,じょく創予防用具,体位変換器,手すり,スロープ,歩行器である。それぞれ条件が付いている。
2. 施設サービス
(介護保険施設の定義)
介護保険法 第7条19項
この法律において「介護保健施設」とは,指定介護福祉施設,介護老人保健施設及び指定介護療養型医療施設をいう。
2-1.特別養護老人ホーム
指定介護福祉施設とは,老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホームであって,当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて,入浴,排せつ,食事等の介護その他の日常生活上の世話,機能訓練,健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいう。(第7条第21項)
2-2.老人保健施設
介護老人保健施設とは,要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて,看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設をいう。第94条第1項の規定により,都道府県知事の許可を受ける。(第7条第22項)現在,老人保健法により規定されている老人保健施設と同じものである。(要介護者は,病状が安定期にあり,介護老人保健施設において,看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療を要する介護者とすると規定されている。厚生省令36号第20条)
2-3.療養型病床群
指定介護療養型医療施設とは,療養型病床群,老人性痴呆疾患療養病棟,特例許可老人病院を指す。
療養型病床群には、介護保険より給付を受けるものと、医療保険から給付を受けるものと2種類ある。
2-4.入所対象者
各施設の入所対象者は,それぞれ以下の通りである。
(1)介護老人福祉施設(介護老人福祉施設運営基準第6条第1項)
身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ,居宅においてこれを受けることが困難な要介護者。
(2)介護老人保健施設(介護保険施行規則第20条)
病状が安定期にあり,入院治療をする必要はないが,リハビリテーションや看護,介護を要する要介護者。
(3)介護療養型医療施設(介護保険法施行規則第22条)
病状が安定している長期療養患者のうち,カテーテル等を装着している等の常時医療管理が必要な要介護者(密度の高い医学的管理や積極的なリハビリテーションを必要とする者を除く)
2-5.施設サービス計画の定義
施設サービスとは、介護保険施設に入所している要介護者について,これら施設が提供するサービスの内容,これを担当する者その他厚生省令で定める事項を定めた計画をいう。(第7条第20項)
当該要介護者の健康上及び生活上の問題点及び解決すべき課題,提供する施設サービスの目標及びその達成時期並びに施設サービスを提供する上での留意事項とする。(厚生省令第36号第19条)
3. 最近の動向
3-1.介護施設の均一化
老人保健施設は,入所期間3ヶ月の制限が無くなり、癌患者の終末期・見取りを行う施設も出現するなど,中間施設の性格を消失している。また,在宅への中間施設ではなく,特別養護老人ホームへの入所待機のための中間施設となるなど,機能が変化している。
特別養護老人ホームでも,看護師,常勤の医師など,医療スタッフを置くところが有り,3施設の境界が不鮮明になってきている。
3-2.介護施設の入所待機問題
措置制度でなく,契約制また申し込み順となり,必要度の低い人も申し込みをして,待機者リストが多くなり,本当に必要な人が,適切な時期に入所できないという問題点も生じている。必要度の高い人を選択して優先的に入所させる事ができる方式の検討がなされている。
3-3.新型特養の整備
特別養護老人ホームにおける4人部屋主体の居住環境を抜本的に改善し、入居者の尊厳を重視したケアを実現するため、個室・ユニットケアを特徴とする「居住福祉型の介護施設」としての特別養護老人ホーム(新型特養)の積極的な整備が、進められる。
ユニットケア方式とは、施設の居室を7〜10名のグループに分け,それぞれをユニット毎に,一つの生活単位として、専従スタッフを配置し、少人数の家庭的な雰囲気の中でケアを行うものである。家庭に近い環境の中で少人数で共同生活を送る要介護者に対して,一人ひとりの生活リズムにあわせた介護や日常生活の世話を行うことが特徴である。
自分の生活空間が出来、少人数の入居者が交流できる空間もあることで、入居者のストレスが減ると考えられる。
3-4グループホーム
痴呆高齢者が,小規模な家庭的な環境において,他の入居者と共に食事の支度・掃除・洗濯など出来ることを行いながら共同生活を行う。家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活することにより,痴呆の進行を遅らせ,落ち着いて暮らせるように支援し,また家族の介護負担を軽減する。
「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」により、入居定員が、1ユニット5人〜9人で、同一事務所で最大3ユニットまで可能という定員基準がある。入居者3人に常勤職員1名を配置する人員基準があり、現実的には1ユニット9人であり、5人〜8人の所は少ない。さらに夜勤体制の問題や、経営の安定化や経営効率の観点から、1施設2〜3ユニット(入所者18人、27人)の所が増加している。新築の施設もあるが、会社の寮を利用するなど、他の目的であった建物を改築して利用するグループホームも多い。
グループホームの開設には、地域差が顕著であり、上位12道府県で、全国の施設数・定員数の5割を占める。
3-5.ケア付き共同住宅(特定施設入所者生活介護)
在宅医療と言っても,要介護者の自宅・居宅だけが,在宅医療の場ではない。都市部を中心に、高齢者の居住環境が、充分に整備されている訳では無い。また独居高齢者、高齢者夫婦のみの世帯では、自宅にこだわった在宅医療・在宅介護が難しい場合がある。3−2項で、述べた通り、特別養護老人ホームを中心に、介護保険施設の入所には、長期間の待機が必要であり、自宅での在宅医療が難しい高齢者が直ちに入所出来る介護施設が不足している。在宅介護の範疇で、施設介護に準じるものとして、有料老人ホーム,ケア付き共同住宅、ケアハウス、高齢者アパート等があり、急速に増加している。
例えば、①ほとんど自立に近い高齢者が、それぞれ独立して自分に合った生活を送り、他の高齢者と交流しながら、家庭的な落ち着いた雰囲気で、精神的に安定した生活を送るもの(例:シルバーマンション)、②自分の身の回りのことが出来る高齢者(介護を少し必要とする要支援から要介護度2程度まで)が、小規模な共同生活の場(5〜9人程度の共同住宅)において、家庭での生活に近い雰囲気で生活できるもの(例:シルバーハウス)、③介護を必要とする高齢者(要介護度2程度の軽介護から寝たきり状態の要介護度5までの重介護)が、小規模な共同生活の場(5〜9人程度の共同住宅)において、家庭での生活に近い雰囲気で生活できるもの(例:ケアホーム)など、入居者の要介護度や、費用の負担など、幅広い選択がある。
また、小規模ではない施設として、元ホテルであった建物を利用するもの、従来型の有料老人ホーム等がある。
さらに、公営の集合住宅の敷地内に、または1階部分のテナントして、ホームヘルパーステーションや、訪問看護ステーション、診療所を誘致する動きもある。
参考文献
早川浩士 グループホームの開設動向を探る.116-118, 2002
早川浩士 2000ヵ所を突破したGH整備状況から見えてくるもの ばんぶう 128-133, 2002.
- 居宅介護サービス
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 居宅療養管理指導
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 痴呆対応型共同生活介護
- 特定施設入所者生活介護
- 新型特養
- グループホーム
- ホームヘルプサービス
- 訪問看護
- 介護保険
- 介護保険施行以前は、施設入所は措置制度下であったが、介護保険施行により、契約制度になり、施設入所望者が殺到し、入所待機者が増えている。
- 在宅ケアは充実しつつあるが、介護の主体は家族であることを忘れてはならない。
- 新型特養、グループホームの充実、施設に準じた在宅介護の増加など、新しい動きがある。